Audio Stop 13

Henri Matisse
Open Window, Collioure, 1905
Not On View
アンリ・マティスの 《コリウールの開かれた窓》 は、現代の私たちの目には穏やかで叙情的に移るかもしれません。しかし、作品の発表当時、その太い筆致や鮮烈な色使いは暴力的ととらえられました。小さいながら激しさを感じさせる、初期のモダニズムを象徴するこの作品は、フォービズムの最も重要な作品の一つとして知られています。フォービズムのアーティストたちは、自然の姿の忠実な再現から離れて、自由な色使いや質感を追求しました。《コリウールの開かれた窓》 は、マティス作品における新たな作風の契機となった作品でした。
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HARRY COOPER:
マティスは色について「私が緑をカンヴァスにおいたとき、それは芝生ではなく、青をおいたとき、それは空ではない」と語ったことがあります。
NARRATOR:
この作品を見るとその意味が理解できると思います。ここではピンクの波やオレンジのマスト、またさまざまな色をした空が描かれています。
近代絵画部部長兼キュレーターのハリー・クーパーです。
HARRY COOPER:
この絵画は小さな作品ながら、大きな影響を及ぼしました。私たちとってもポスターやカレンダーなどでおなじみの作品です。しかし当時は、印象派の作品に慣れ親しんだ人々の目にも、作品はかなり進歩的でした。
中央のボートは、白っぽいピンク、青、サーモン色、深緑の4本の太い絵具の筆致のみで描かれています。この作品にはマティスが当時考えた以上の発明があるのです。
NARRATOR:
この作品はマティスの画家としてのキャリアの転機となりました。1905年の サロン・ドートンヌ展で発表されたこの作品は、一人の批評家と同時代の数人のアーティスト達に、「野獣」を意味するフォーブと一蹴され、「原色の乱痴気騒ぎ」と揶揄されました。しかしその名称はそのまま定着し、マティスはフランスの20世紀最初の前衛運動となった、緩く結束したこのグループのリーダーとなったのです。
HARRY COOPER:
中央部分は美しくダイナミックですが、その周辺の壁や窓などの枠組みは印象派の特徴的な筆致から脱却し、所々細かい筆遣いで軽やかに、そしてリズミカルに仕上げています。さらにところどころ広い色を対比させており、ここに将来のマティス作品の原点が表れています。