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Hiram Powers
The Greek Slave, model 1841-1843, carved 1846
Not On View
文字起こし
ハイラム・パワーズ、ギリシアの奴隷、設計 1841-43年、制作1846年
ナレーター:
ハイラム・パワーズは、「ギリシアの奴隷」という作品をいくつも作りましたが、これはアメリカの彫刻で最も有名なものの一つです。この作品は1846年のものです。
トルコに対するギリシアの独立戦争は、列強諸国にインスピレーションを与えました。しかし19世紀の人々にとって、この奴隷の女性は、アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人の、奴隷制への反対運動も象徴していたのです。
この作品はアメリカとヨーロッパの各地で展示され、小さな複製品が販売されました。複製品の一つが、有名な奴隷解放論者フレデリック・ダグラスのものでした。
カマル・マクラリン:
私はカマル・マクラリン、国立公園局の、自由に向けた地下鉄道ネットワークのプログラム・マネージャーです。シーダー・ヒルとしても知られる、フレデリック・ダグラス国定史跡の元学芸員でもあります。
シーダー・ヒルのダグラス邸を訪ねると、いわゆる「奴隷制廃止を主張する」数多くの芸術作品を目にされるでしょう。ダグラスはこうした作品を利用して、奴隷制廃止運動の記憶をとどめ、また「過去の運動」についての重要な教訓を周囲に伝え続けました。奴隷からやがて奴隷制度廃止運動家へとその境遇が変化する中で、その重要な象徴であるこの作品は、さまざまな点で彼の心に深く訴えかけるものだったのです。
特に1840年代には、この作品は国内外の各地で幅広く展示されました。その事実は、この「ギリシアの奴隷」像をどのように理解すべきかという、国内的、かつ国際的な議論のきっかけとなっているのです。
ナレーター:
奴隷制の伝統に対抗するという、アメリカの芸術が担った役割は、この「ギリシアの奴隷」と、それが引き起こした激しい議論までさかのぼります。そうした議論のいくつかは、アメリカの奴隷制を廃止すべきかという根本的な問題にまつわるものでした。彫像の女性が全裸であることは、一部の鑑賞者を戸惑わせたかもしれません。でも彼女の控えめな表情と仕草、そしてその服は所有者にはぎ取られたのだと考えた時、結局のところ、罪深いのは彼女の肌ではなく、奴隷制という不正義だということが分かります。
カマル・マクラリン:
ハイラム・パワーズは、議論のきっかけを作り出しました。それは1840年代から始まり、50年代、60年代まで、人々の道徳心の強さを試しました。そして奴隷制の遺産と、こうした芸術作品にまつわる議論は、さまざまな意味で、実は現代にいたるまで続いているのです。